動植物
植生の特徴
この地域の植生は地歴と深く関わり、原初的要素に人為が加わり、その後に二次的に成立したものが混在しているのが特徴です。草原の主体はササですが、その中にいくつか元々広く見られた植物が見られます。水面にはヒシやフトイをはじめとする水草が繁茂し、岸辺にはヨシの広がりも見られます。沼岸のハンノキや樹林地に見られるハリギリなどは、かつての湿原地帯にモザイク状に見られた平原林の名残と思われます。
現在の農村公園に隣接するところでは、外来植物であるオオアワダチソウが広がっています。この当たりは、かつて表土を剥がれ、牧草地として利用されたところで、このままでは湿原植物が復活しにくいところと考えられます。掘った土が盛られたと思われるところには、ズミが散生し、またヤナギ林と化しているところもあります。
これらの現地調査と空中写真の目視判読をもとに植生図を作りました。
植物相
これまでの現地調査により、63科199種の植物を確認することができました。過去の文献も加えるとこの地域一帯には89科412種の植物が生育していたと考えられますので、高層湿原から中間湿原を代表する植物を含む、かなり多くの種が消失してしまった可能性が高いといえます。
植物相は、水草や湿ったところを好む種から、乾燥したところに見られる種まで幅広く、様々な環境や攪乱に応じて、多様な種が狭いところに同居しているのが越後沼湿原一帯といえます。
鳥類相
越後沼湿原は北海道中央部の石狩低地帯のほぼ中央にあって、本州とシベリア方面とを結ぶ渡り鳥のルート上に位置しています。そのことは水鳥を始めとする鳥類にとって重要な中継地であることを意味し、春と秋には沼に、カモ類やハクチョウ類をはじめとする多くの鳥が羽を休めます。また湿原は、近年その生息地が減少している草原性鳥類にとって、貴重な環境を提供しているといえます。
これまでの現地調査の結果、この地域で29科81種の鳥類が観察され、孤島のような本地域に、非常に高い種の多様性が存在していることがわかりました。石狩低地帯において、越後沼湿原のような開水面-抽水植物-湿原-半乾燥草原といった環境が極めて少ないことを考えますと、広い視点からも、越後沼湿原の存在価値は、鳥にとって一層高いものであるのではないでしょうか。